ファミリーレストラン
ファミリーレストラン 「外食」の近現代史
今柊二 光文社新書 2013.1.20
まえがき
- 1970年代、ファミリーレストランが勃興し、隆盛し始めたころ→家族で外食するという流れは現在まで続く
- 明治以降、人々の動きが活発化。同時に家族も家の外で食事をするようになる
- デパートの食堂は家族や女性が外食をする上では大きな役割
- 戦後は経済の復興とともに自動車により家族の行動範囲は一挙に広がる→外食産業も成長
- 万博のあった1970年が外食産業の大きな転換期。ファミリーレストランが続々と登場し、1980年代に黄金期
- 1990年代は景気の動向もあって厳しい時代に。低価格化の流れ→変質を始める
- ファミリーレストランは専門食化
- 何事においても一つのものを軸において歴史の流れを見ていくと、それに付随して周辺のこともわかる
- 家族の外食を追うことで家族の行動形態や日本人の食文化の変化もくっきりと見えてくる
第１章 ファミリーレストラン前史� 檗ヽ或�の誕生
家族という単位での外食が本格的に開始されたのは明治以降。この章では明治以降に勃興した様々な外食、そして大衆食堂について記す。
- 明治維新以降、人々の動きの加速化とともに広がる「外食」： 西洋料理店・食堂車 → 駅弁 ― 気楽な外食 → 駅前食堂、そして丼料理の発達[メニューが豊富→家族で楽しめる→ファミリーレストランの始祖の一つ]
- 鴎外は「ファミリーレストラン」ユーザーの先達
- 大衆食堂の登場 − 食も観光だ
第２章 ファミリーレストラン前史�◆ 檗．妊僉璽反�堂の隆盛
FRの前身的存在であったデパート食堂と、デパートの成立・発展について。デパートとFRには共通する人気の要因
- 「観光場」としての「勧工場」 − デパートの前身
- 三越、百貨店へ
- 食堂、そして「家族」の発見： 百貨店が家族を重視して大食堂をつくったり屋上遊園地をつくって家族で楽しめたりする発想は日本で独自に進化
明治以降、母親は家庭からの解放と食事を楽しみ、子どもは家庭の外に広がる食や文化などの世界に触れ、父親は子どもや母親の喜ぶ姿を見て視覚化された「楽しい家庭」に満足感を得て、「あすも頑張ろう」という気持ちになったのだろう。
家族の各人で満足するポイントは多少違っても、百貨店なり、百貨店のなかの食堂は大事な場所となり、この「家族にとって大事な場所」という思想は、後のファミリーレストランにも継承される
- ターミナルデパートの登場
- 地方へ広がるデパート文化
第３章 ファミリーレストラン前史�� − 戦後の食の多様性
太平洋戦争前後の外食文化の苦難の時期と戦後に生じた食の多様性、外食文化の復興、FRに大きな影響を与えたあるホテルについて
- 戦前昭和の「豊か」な時代
- 銀座とアイスクリーム
- 戦時中の食糧統制と食料の欠乏 − 外食券食堂と雑炊食堂
- 戦後の欠乏と闇市と引き揚げによる食の多様性
- 強いアメリカ洋食の影響 − ホテルニューグランド
- ファミリーレストランの源： ホテルニューグランドにある様々な特徴が後に発生するFRの直接的、間接的な要素となりえている。
- 2階の大食堂以外の1階にもグリルルームを開設し軽い食事や飲み物をとれるようにした。また、一品料理を食べられるようにした[それまでのホテルは格式ばり、料理も定食のみで値段も高い]→FRが勃興したころの「週末はちょっと贅沢してFRで食事」という「ちょっとしたシアワセ」の思想の原形
- 後にFRで愛される料理がいくつか考案される： スパゲティナポリタン、シーフードドリア、プリンアラモード
-
第４章 外食文化の復興、高度経済成長、そしてファミリーレストランの誕生
1970年代に入ると、本格的にFRが登場。その成立の背景と日本のFRの嚆矢たる「ロイヤルホスト」について
- 外食文化の復興 ー デパート食堂の隆盛
- 日本人の食生活の変化
- 戦後最初の外食ブームはアルコール系から
- 高度経済成長と所得の増加
- 交通革命 − モータリゼーションと市電の衰退
- ロイヤルホストの誕生： 1952年福岡市内でロイヤルベーカリーを設立[基地でのノウハウ、SPSルートで入手できる上質の輸入小麦粉とイースト、アメリカから最新鋭の機械の導入]
交通の便の良い国道沿いに工場。ドライブインレストランを併設。
機内食、空港レストランの展開
1953年11月、福岡で初めての本格的なフランス料理店「ロイヤル中州本店」が開店。料理長はホテルニューグランドから。１階は喫茶、２階はフランス料理。
- セントラルキッチン（集中調理工場）をいち早く建設
- 大阪万博という１９７０年のターニングポイント
第５章 ファミリーレストランの時代
1970年代を迎えて、いよいよ本格的にFRの時代。もっともFRらしいチェーン店となった、すかいらーく、デニーズ、ロイヤルホストのその後の展開を追う。この時代のFRのメニューや特徴について。
- すかいらーく、名称としての「ファミリーレストラン」を生み出す： 1970年7月東京の郊外国立で誕生。アメリカのデニーズビッグボーイ、ハワードジョンソン、サンボズのようなロードサイドのコーヒーショップという業種に注目
一つの商品の力で勝負するのがファストフードなら、コーヒーショップはサービス、店舗環境、快適な時間、商品力の総合プロデュースで勝負。コーシーショップはビジネス向きというイメージだったので、ファミリーレストランと命名。
- すかいらーく、郊外のロードサイド店にシフトする
- １９７８年、すかいらーく１００店舗達成
- １９７０年代までのアメリカのコーヒーショップ事情
- アメリカでドーナツ店として出発したデニーズ、イトーヨーカ堂によって日本へ： 1974年上大岡のイトーヨーカ堂のなかに第1号店。
- ロイヤルホストの東京進出
- 全国でファミリーレストランチェーンが勃興する 1970年代までに全国各地で勃興し、首都圏にも進出したもの：とんでん[札幌市。浦和市で1号店]、あさくま[名古屋市]、サンデーサン[徳山市]、フレンドリー[大阪市]、ジョイフル[大分県]
- まとめ� ／諭垢呂覆鵑凌�べ物に魅了されたか？ − ファミリーレストランのメニュー ハンバーグ、ライス、デザート、コーヒー[アメリカンコーヒー、お替り自由]
- まとめ�◆／諭垢呂匹Δ靴謄侫．潺蝓璽譽好肇薀鵑北ノ擦気譴燭�？ 父親は家族の確認 自動車での移動が前提 おいしいものを食べる[先端的なものが食べられる場所；ピザ、グラタン・ドリア]、イベント[レジ周りのお菓子やおもちゃ]
1970年代のFRは家族で楽しむアミューズメントパーク
第６章 「食べる場所」から「いる場所」に
FRが更に輝きを増した1980年代。「おいしい食事を家族で食べる」場所から「家族や友達、仲の良い異性とともに『いる』」場所へ発展
- 早すぎた「ジョナサン」
- 勢いに乗る「すかいらーく」と「ロイヤルホスト」
- 「ファミリー」から「カジュアル」へ
- 「食べ放題」の魅力 − 「フォルクス」「あさくま」
第７章 大きく変化するファミリーレストラン、同時に変質する「ファミリー」の利用
1980年代終わりの時代から、大きく変容していった1990年代。成長が始まった目的別に食べるFRのながれ。
- バブル景気と人手不足の時代
- 不況、そしてガストの登場： 1992年6月、FRを不景気の波が直接襲う。すかいらーくは小平で実験店「ガスト」をオープン。中古の什器備品・機械、自由に着席、「創業当時のお値段」。更に新しい機器の導入。
- 呼び出しボタン、ジェットオーブン − ニューマシンの登場
- ドリンクバーの功罪と、清涼飲料水多飲化への道
- ますます強まる「いる場所」機能： 実験店「ガスト」は成功。1993年9月には「ほとんどのすかいらーくをガストに転換する」と発表。ドリンクバーの導入によって料理の感動力が低下してしまったのではないか。ただガストの好調さは他のFRにも多大な影響[ドリンクバー、呼び出しボタンの普及。低価格化]
値段が下がりFRは急速に身近なものに。休日のイベント→平日でも利用しやすく。家族によっては遅い時間に食事をする傾向＋ドリンクバーで、食事が終ってからも長居ができる。「家族も含めたいる場所」機能がさらに高まる（より安くいられる場所となる）
- 高級化志向と和食レストランの台頭
- 専門型ファミリーレストラン − 中華料理「バーミヤン」の成功
- 外食、内食、中食の密接な関係性： 外食で専門料理が流行し定着するためには内食や昼食も多分に影響 中華[都市ガスやプロパンガスの家庭への導入で強い火力。麻婆豆腐の素などの登場] イタリア料理[イタリア料理ブーム。ピザ宅配]→サイゼリアの発展の下支えの一つ
第８章 専門料理に特化するファミリーレストラン、次の「ファミリー」レストラン
21世紀になり、低価格化と専門料理特化の2つの流れ。FRの機能がSCのフォードコートやSAなどに見られるように。そのような流れとFRの本質に立ち返り、今後の流れを見る
- 日常化によって消滅するファミリーレストランの「ときめき」
- 専門化する「ファミリーレストラン」� 檗‐篤�店
- 専門化する「ファミリーレストラン」�◆ 檗＿鹽昭�司の隆盛
- 専門化する「ファミリーレストラン」�� − 「安くて」「おいしい」サイゼリア
- サラダバー食べ放題のステーキ・ハンバーグレストランの台頭
- 新たな「ファミリーレストラン的」な場所 − SCとSAのフードコート： 1980年代後半から日本のあちこちでSCが本格的に登場。フードコートは集客力が高かった。
週末になると家族でSCに行き、そこで買い物をしてフードコートで好きなものを食べて帰宅する。そんな流れが定着したのが1980年代後半から2000年以降の日本の郊外〈買い物の帰りにわざわざファミリーレストランに寄らなくてもいい）
フードコートは空港とともに、SAにも用意された。
SC、SA、そしてフードコートは21世紀以降の「家族の場」として非常に興味深い施設 →『SC、SA、そしてフードコートの思想』
- 大きくならなくてもいいじゃないか − ハングリータイガー、タマヨシ
あとがき
- ファミリーレストランのどこが好きかと言われれば、人生の様々な局面によって好きなところが変わる部分
- 子どものとき：ファミリーレストランに行くことに興奮
- 学生：バイト先の友達とサラダバーを爆食しつつ語り合う
- 社会人：友人とともにミニコミをつくる場
- 一人でぼんやりとコーヒーを飲んでいる時間もよかった
- 結婚して子供がうまれ、家族みんなでご飯を食べる楽しみに改めて気が付いた
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